第40期の通期業績は、前期末の契約残高不足と上期の新築戸建契約が計画比で伸び悩み、売上高が減少したことで5期連続の赤字となり、大変申し訳なく思っています。ただし契約面では、リゾート施設や保育施設等といった非住宅建築の提供を行う法人向け事業(特建事業)が上期から堅調に推移、新築戸建事業も下期から伸長し、契約高は前期比125%、期末契約残高は前期末比129%となりました。また、資材や運搬費の上昇も落ち着き、きめ細かな価格改定等により売上総利益率がウッドショック前の水準までに回復、販管費削減の進捗により、損益分岐点は大きく低下してきています。利益体質は着実に改善し、契約残高の増加とともに、2026年3月期下期より黒字化を果たす道筋が見えてきました。財務面では、代官山資産譲渡代金の入金もあり、当面の運転資金に問題のない状況を維持しています。これから事業を成長させ、安定軌道に乗せていくには、機会損失を生じさせないようモードチェンジするタイミングに来ているとの認識です。
新規来場者数は前期比減となりましたが、LOGWAY拠点数の減少、ホームナビゲーター(営業)数は最盛期に比べて半分以下という現状に鑑みると、体制相応の規模感との認識です。とは言え、やはり集客は先行して上回る状態が望ましく、そのサイクルを生む方向へとベクトルを変換させていく時期にあると捉えています。特に一次取得のメイン層となる30代の来場が減少していることを受けて、マーケティング効果を分析したうえで、広告戦略やマーケティングの質の見直し等、しかるべき手を打っていく計画です。
下期には、営業効率(一人あたり契約棟数)がコロナ禍前の水準(年平均6棟)にまで回復し、過去最高に近いパフォーマンスに現場も自信を取り戻しているとの実感があります。この勢いを活かし、1拠点あたり1〜2人ずつ、ホームナビゲーターを増員し、人員体制を強化したい考えです。本部でのリアル研修も再開し、直販部門の採用も積極化しながら、再来場のたびに熱量を高める、BESSならではの農耕型営業の強みを加速させます。
法人向け事業は需要が旺盛で、その市場性の大きさをより実感することとなりました。場づくりを含めたBESSの提案力に対する期待値の高さに大きな手応えを感じる一方、フルオーダー対応の難しさや体制不足により、受注できる案件数に制限がかかっている状況にもどかしさも感じます。外部パートナーとの連携や設計職の強化、各地域の拠点への工事委託など、体制を補いながら事業成長への道筋を追求していきます。
第41期(2026年3月期)のスローガンは、「BESSイノベーション2025」です。モチベーション向上にもっとも効果を発輝するのは業績回復であることに間違いありませんが、そこに至る過程として、さまざまなプロジェクトを立ち上げ、特に若い世代の参加を促すことを仕掛けてきました。その1つが、グループ会社の社員も含め全社員を巻き込んだブランド理念の見直しです。昨年12月に創業者・二木元会長が逝去し、来年3月に40周年を迎える今、全社員アンケートに加えて、有志が集まり会社や事業について熱く議論を交わす機会を設けました。
ブランドミッション「ユーザーハピネス」の本質に立ち還り、本当に今、それができているか自分たちに問いかけ、出てきた答えから、改めて『人間へBESS』を存在意義として定めました。私自身、最後に二木元会長と過ごした時間は常に「人間とは」を考える時間でした。その問いからさまざまな答え、未来を描いてきたのがBESSであり、今後も変わらない本質です。“自分らしさ”を大事にする人が増えている中、“人間らしい”生き方や暮らしに気付くきっかけにBESSがなれたらいいなという想いもあります。これまでカリスマ経営者が語り部として「何を大事にしたいのか」を世の中に問いかけ続けてきましたが、今後はBESSブランドそのものが求心力の源となり、1人ひとりが自ら当事者として考え、伝承者になっていかなければなりません。
また、これまで言葉で示していなかったビジョンを改めて『劇的感動』と定めました。業績低迷から閉塞感と自信のなさが漂う中、好きで始めたこの仕事、憧れを持って入社したその想いを今一度、取り戻したい、BESSを通じて、「もっと感動を作っていこう」「自ら感動できる仕事をしていこう」という想いを形にしたビジョンです。
同時にブランドの本質を守り抜くためにも、アプローチややり方は変えていく必要があるとの意識を少しずつ浸透させています。商品開発面においても新しい試みとして、みんなが作りたいと思っているものを持ち寄って形にしていく、社内横断プロジェクトを立ち上げました。特に経営再建の途上ではスピード感は非常に大事であり、常にアイデアを温め、いつでも世に出せる体制であること、その前提には常に考えていることが必須です。やり方は幾通りもあってよく、社外とのコラボレーションも含め、BESSらしい独自性と感性を活かした新商品の創出に繋がるような取り組みを並行して走らせながら、BESSらしいブランドのステージアップを果たしていきます。
こうした取り組みを通じて、社内のムードが少しずつ変わってきたことに心強さを感じていますが、継続しなければ意味はありません。価値観が多様化し、それを認め合う世の中になりつつあり、画一的なやり方は通じない時代。ユーザーハピネスとともに、働き方も含めた社員ハピネスも実現したいという想いもあります。人の心を動かすには、まず自分の心が動いていることが大事です。自ら感動を作り出せる自分であるためには、自身に余裕がなければできません。そして「BESSはみんな楽しそうだね」「仕事に誇りを持っているね」「自分も一緒に働きたい」といった想いが広がるような状態に辿り着けたら、本当の意味で一目置かれる、持続可能な存在になり、BESSの価値、雰囲気は確実に周囲にも伝わるはずです。そのためにも本部がマーケティングで流れを作り、現場は来場者の期待や熱を冷まさないという従来の役割分担の流れを取り戻し、その質を高めていく。そのためにも、まずは現場をサポートする本部が果たす大きな要素「集客」と「商品」、そして「事業構造(仕組み)」の強化にますます力をかけていきます。持続可能な成長のため、1+1=2という単発の積み重ねの発想ではなく、1つの仕事が継続的かつ波及的に貢献を生むパフォーマンスの高い事業構造を目指していきます。
例えば、宿泊施設を通じたBESSブランドの認知やファン化、単身者や夫婦2人世帯向けの賃貸住宅を通じて「いつかはBESS」の想いを育てライフステージの変化とともに現実化していく、そんな循環を生み出す新しいファンづくりに繋がる取り組みも進めていきます。また、当社ではここ数年、国産材への切り替えを進め、資材の仕入れルートの安定化を図ってきました。この接点をさらに1歩進め、供給元と直接的につながり、地域に貢献できる存在になれるネットワークづくりをスタートさせ、現在、栃木・愛知・大分3エリアでその関係性が構築されつつあります。林業の課題であった大径材活用をログ材やパネリングなどBESSの各種部材で有効利用することで実現し、森の循環サイクルの適正化に貢献しています。また、並行して取り組んでいる地方行政と連携した移住促進等、ストーリーが少しずつ繋がり、面として広がりつつある段階にきています。各地の自治体や企業との連携の輪を有機的に広げ、地域貢献とともに、新たな収益創出やブランドPRを通じて、BESS事業の持続成長を支える取り組みにしていきます。
ブランドのコンセプトと自分自身を同化させることに満足を感じる人にとっての価値、それがブランド価値であり、まさに感性マーケティングの真髄だと感じています。好き嫌いを入り口に奥底から望むものに気づいてもらう、その「人間らしさ」への触媒となることに喜びを感じるのがBESSであり、それは互いにとって幸せな瞬間です。その瞬間を紡ぎ出すために、大胆なことにもチャレンジしながら、「BESSだけだよね、こんなことやるのは!」と言われるような活動を続けていきたい。二木元会長からも最後まで「常に面白いことをやれ」と言われており、小さくまとまる道は決して選ぶまいと肝に銘じています。これまでの40年は大木を育てることに重きを置き、幹に養分がいくように枝葉を払う選択がされてきました。これからは根幹であるBESS事業はさらに太く成長させ、枝葉となる周辺事業も育て、遠目に見ると、丸く豊かに緑が生い茂った木に育てていく、そうしたステージになると考えています。それは他の木を植えるということでは決してありません。大衆化させ、ブランド価値を薄めるような広がりではなく、利用者の付加価値を高めBESSファンを増やし、ブランドの価値を高め、BESSを成長させる、それは足元にとらわれすぎることなく、持続的な繋がりの中で、その先に及ぼす影響も考えながら、1つひとつの戦略を丁寧に進めていくことに他なりません。
ブランド価値の向上はもちろん、企業価値を正当に評価いただける持続的成長を具現化する、自らのあり方を高める事業構造への手応えも掴めてきています。引き続きご期待、ご支援いただけますようお願い申し上げます。
BESSの家は「ベーシックで個性的」、とりわけデザイン耐久性の高いことが特長です。背景に“家は社会のインフラ”という考え方があり、汎用的な間取りや飽きのこないデザインを追求しています。外観は、シンプルであるのと同時に、一目でBESSの家と分かり、住む人の暮らしの色が滲み出ています。 また、本物の素材を使用していることもデザイン耐久性を高めます。無垢材のラフ感や自然な風合いが、新築時でも馴染んだ雰囲気をつくり出します。住み始めてからも適切にメンテナンスを行えば、年月を経ても古びず、むしろ味わいが増してくる。手をかければかけるほど応えてくれるのが木の家であり、それが愛着につながっていきます。
そして、BESSの家に欠かせないのが遊び心です。デッキや土間、縁側は、住人と自然、住人と地域とのつながりを生みます。吹き抜けやロフト空間は家族同士をゆるくつなぎ、勾配天井の下の屋根裏空間は遊び心をくすぐります。床面積の効率だけで考えるとこれらの空間は無駄であり、ともすると使い勝手が制限されるものですが、あえて設けることで暮らしの楽しさや幅が広がります。
BESSでは、「何となくいいな」「好き」という入口から家を選ばれる方が数多くいます。家の購入を考えてもいなかった人がLOGWAYで一目惚れして購入に至った事例もあり、契約される方の半数近くを最初の来場時には具体的な計画のなかった方が占めています。
こうしたことがBESSで起こるのは、商品開発の出発点が独特だからではないかと思います。BESSは、そもそも人間とは、人間にとって家とは何なのか、人間と自然の関係とは、日本人の感性とは何なのか、といった次元から侃々諤々の議論を積み重ね、家を作っています。本質から議論し、感性を捉えて、言葉に、そして形にしていく。その結果として、他とは異なるBESS特有の家に近づくのではないかと思います。
今の時代、家を持たなくても良いという人が増えてきているように思います。しかしBESSは、家を持つ意味を変える力があると思っています。それは、単なる箱ではなく、暮らしの楽しさや人生の幅を広げるもの。もっと多くの人にBESSと出逢ってもらい、心を揺さぶる商品を提供し続ければ、BESSの家はまだまだ増えるポテンシャルがあると思っています。
住宅業界においては、性能重視の流れがますます強くなっていますが、そんな動きに対して疑問を持つ人も多く存在します。もちろん性能は大事ですが、人間の力を引き出すことも、豊かに生きる上では必要だと思います。
私たちは“人間も自然の一部”という考えを持っています。BESSの出自であるログハウスを始めとする木の家は、人間が本来持つ力を引き出しやすく、日本人の暮らし文化にも合います。これまで木の家の王道であるログハウスをBESS流に作ってきましたが、これからも世の中の動きに合わせて進化させながら展開していきます。
BESSはこれからも本質は変えません。しかし、表現は変えていきます。商品のバリエーションや対応の幅を広げることで、新たなBESSファンをつくっていきます。栖ログ特別モデル「M50s」のように既存商品の幅を広げ、三角WONDER「間貫けのハコ」の新外装追加のように新しい商品を育てていきます。加えてブランドの考え方が顧客に伝わり選ばれやすくなるよう、商品ラインナップのあり方も検討していきます。また、外部との連携や社内横断プロジェクトなど、これまでとは異なる方法で開発プロセスのバリエーションを増やしながら、新しい商品を生み出していきます。
家で一番大切なのは、住まう人の暮らしです。これからも、BESSとして本質を深めつつ未来を見据え、新しいマーケットを創造する商品開発を行っていきます。
BESSは、地域の山元と連携した、「山とつながるプロジェクト」を始動しました。国産木材の安定調達ルートの確立を目指すとともに、将来的には地方が抱える課題の解決や地域活性化への貢献にもつながる、BESSならではの挑戦です。
木を多用するBESSは、国産材を安定的に調達するため、既存ルートからの調達に加えて、栃木・愛知・大分の3エリアで、山元や製材・加工業者との直接取引を始めました。地域と直接つながり、森林の保続・加工の提案等を行うことで、木を最大限活用し、山林・原木の価値を向上できるよう働きかけています。そして、年間使用量の契約による計画的な伐採や、山元の就業者増加など、林業や地域の活性化も目指しています。 |
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プロジェクトの開始以降、新たなサプライチェーンの構築とともに、木材の価値向上に注力しています。その取り組みの一つが、林業の課題である大径材の活用です。現在、戦後造林により、直径30cmを超える大木が国内の森林の過半を占めています。しかし、伐採・運搬・加工の難しさや、一般建築用材では活用しにくい等の理由から、大径材はあまり活用されていません。そこでBESSでは、大径材の大断面から、ログ材・手摺材・パネリング材・各種内装材などを切り出し、無駄なく活用できるよう、山元・製造工場と相談を重ねて運用を開始。一部のパネリング材は、3種類の幅にカットし、三角WONDER「間貫けのハコ」の天井仕上げ「すだれ張り」に採用しています。木の価値を最大化するため、あえて幅違いにすることで、大径材の外側近く、幅が広い材をとれない部分まで活用するとともに、BESSらしい個性的な室内空間を実現しました。このようなBESSならではの取り組みにより、林業や地域の課題解決・価値創出に貢献していきます。 |
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BESSは、「山とつながるプロジェクト」の活動と並行して、地方行政と連携した移住促進など、社会課題の解決にも取り組んでいます。BESSには40年間積み重ねてきた自然寄りの暮らし提案に加え、フォレストクラブやLOGWAYコーチャー制度、梺ぐらしなど、人や地域をつなげられる仕組みが数多くあります。今後も各地の自治体や企業との連携の輪をさらに有機的に広げていき、新たな収益事業の開拓をはじめ、サステナビリティ・地域活性化への貢献やブランドイメージの向上を通じて、BESS事業の持続成長を支えられるよう継続的に取り組んでいきます。 |
![]() ![]() 地域の枠を超えたシンポジウムを開催(2025年2月) |
2025年の様々な取り組み、
活動を紹介します。
三角WONDER「間貫けのハコ」は、“マがあって、ヌケがある”をコンセプトに、2023年10月に発売した商品です。発売以来、110組以上のご家族に選ばれてきました。マとヌケが人と人の心をつなぎ潤す、“縁側みたいな家”。個性的な外観印象と、国産杉にぐるっと囲まれたおおらかな室内空間が特徴です。
その個性的な外観に、2025年4月より、新外装[なみ鋼板]が登場しました。屋根と壁一体をつつむ、すっきりと潔いドレープ。波型に加工されたガルバリウム鋼板と銀色の無骨なビスで、家の表情にアクセントをつくりました。不思議な存在感がありながら、全体はやわらかい印象で、自然環境にも馴染みやすいデザインです。
今後も、新たな商品開発に注力し、「間貫けのハコ」をはじめとする個性豊かな商品で、市場を開拓していきます。
2025年4月26日より、千葉県木更津市に、「LOGWAY BESS木更津」を3拠点目のBESS本部直販拠点として再オープンしました。これにより、BESSのLOGWAY展示場は全国で32ヵ所となります。
BESS木更津には、カントリーログ、G-LOG、ワンダーデバイス、IMAGOの実物モデルがあり、庭や外構を含めたBESSの世界観を体感できるほか、暮らし体感イベントも随時開催。大規模商業施設から車で6分の立地にあり、千葉県内のみならず、アクアラインを利用しての、神奈川・東京エリアからの集客も見込まれます。
働き方の変化により、移住や郊外暮らしのニーズが増加している中、気候が温暖で、都内への通勤も可能なことから、千葉/木更津も人気のエリアの一つ。再オープンにより、千葉県のマーケットを開拓していきます。また、BESS木更津は今後、従来のモデル見学・暮らし体感に留まらない、宿泊事業等の新しい取組みを検討していきます。